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【雑談】新日本語の中級 登場人物について話す

企業での日本語研修に『新日本語の中級』を使っていますが、本当にこれはよくできているテキストです。ターゲットが明確だとこうなるんだなという見本のよう。もちろん語彙の古さは否めませんが、そこはカスタマイズすることで問題にはなりません。

さて、今回ここで注目したいのは、登場人物の「小川さん」です。
東京コンピューターという会社で実習を担当している、おそらく総務か人事の人。イラストからはまだ若手の社員であることがわかります。
このテキストを使っている日本語教師はそう多くないのではないかと思われますので、どんな人かを一緒に探りましょう。


1課では研修生の質問に答えるだけだった小川さん、5課で研修生の李さんをJリーグに誘います。サッカーが好きなんですね。1時半に千駄ヶ谷駅で待ち合わせです。

11課では李さんと食事やコーヒーをおごったりおごられたりしています。李さんは「小川さんにはいつもごちそうになっている」と言っています。太っ腹です。でも小川さん、同僚の佐々木さんと飲みに行ったときは割り勘です。10円単位で。しっかり者です。

14課では高いコートを買っています。「給料なくなっちゃった」なんて言っています。独身貴族でしょうか。おしゃれだとかセンスがいいとか、同僚女性に褒められまくっています。
しかし、驚くのはこの先です。

16課で同僚の佐々木さんに言われます。
「そういえば小川さん、新しい家買ったんだって。」
うんと答えています。小川さん、お金あったんだ!しかもウサギ小屋だと謙遜していますが5LDKです。一戸建てです。今度の家は郊外だと言っています。

18課の練習問題で、「小川さん、このごろ忙しくて、毎日4時間以上残業しているそうだよ」なんて言われています。働き過ぎです。終電帰りでしょうか。家を買ったのでローンが大変なのかもしれません。

19課、課長との雑談で言っています。「うちの両親は大阪に住んでいるんです。」
一緒に住まないのかと言われて「(家が)狭いと、お互いいろいろ気を使わなくちゃならないですからね」と。大丈夫、5LDKですよ。その後の会話で「うちは共働きですから」と。
結婚してたのか!
14課で「給料なくなった」と言っていたのは、実は「お小遣いなくなった」の間違いだったのかもしれません。
この課は急展開しています。小川さん、「実は僕、今度転勤なんだよ」と同僚に漏らしています。
えええええ?
凄い田舎だと文句をいう小川さん。都会のほうがいいと言う小川さん。東京の郊外でも家から離れたくないようです。
共働きの妻はどうするのでしょうか。単身赴任でしょうか。

その答えは練習問題7の例にあります。
「転勤のことで一人で行くか家族と行くか、いろいろ考えたけど、やはり一人で行くことにしたよ。子どもの学校のこともあるし。」

お気の毒です。
このテキストは全部で20課までですが、20課の本文には小川さんが出てきません。
練習問題で1回だけ同僚とどうでもいい話をしているだけです。
もう転勤したのかもしれません。

こんな話を学習者としました。
16課から19課の展開がすごかったので、学習者が気付いて話してきたのです。まあ、気付くように仕向けているんですけれどね。
これでこのテキストでの学習も終了。おもしろかったです。

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