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初級後半からの小論文のススメ

作文。それは、とても苦痛な響き。
私は小さいころから決して嫌いではなかったけれど、「なんでこんなつまらないこと書かせるんだろう、先生って」と思っていました。
誰もが小説家になれるわけではないように、誰もが素敵なエッセイを書けるわけではありません。
それなのに、「遠足について作文を書きなさい」とか「課題図書の中から1冊選んで感想を書きなさい」とか、難しすぎます。
遠足なら「××に行った。すごかった。おもしろかった」しかないし、読書感想文に至っては、面白かったか退屈で読むのを止めたかしかありません。
遠足で何を見たかを羅列しても、いい文章ではないでしょう。
かようにエッセイは難しいのです。読み手に余韻を残すものでなければ、いい文章とは言えないと思うのです。
(同様に、この文章も決していい文章ではないことは百も承知しています。)


でも、小論文なら別です。
いかに読み手を納得させるか。これにかかっています。
論理的に破綻しないよう気を付けて、文章を組み立てる。
これは例えば、ビジネスパーソンがプレゼンするのに似ている技術です。
そしてこれは、訓練すれば誰でも上達する技術です。

日本語が初級後半レベルの日本語学校生でも、訓練すると書けるようになります。
もちろん語彙も文法もまだまだですが、それでも書けるのです。

実際に私が授業でしたことは
  1. 一つのトピックで異なる二つの意見を提示
  2. それについて、自分ならどちらに賛成かを考えさせる
  3. その理由を書く
  4. 反対意見も取り上げて、それに対する意見も書く
  5. 型を提示して、それに当てはめていく
以上です。
もちろん、初級ですから、書く文章はすべて「です・ます体」です。そして1回目にはワークシートを用意して埋めていくことから始めます。順を踏んで進めていくのがコツです。
ワークシートの「型」に穴埋めして、文章の形ができたら、最後に清書するのも忘れずに。
これを2回くらいすると、3回目にはどう書くかを覚えていて、いきなり書けるようになりました。
すごいよ、君たち!と思いますよ。

なぜこんな練習をしたかというと、4月入学で11月の日本留学試験を受けるという学生がいたから。
「私の家族」みたいな、文法力を確認するためだけの作文をする暇があるなら、近い将来必要になる力をつけるためのトレーニングをしたほうがいいと、このときは心底思いました。

『みんなの日本語初級Ⅱ』の、たしか30課くらいから始めました。
それまでは出てきた単語を覚えるのが勉強という感じだったのに、自分の意見を書くために辞書で熱心に言葉を探し始めたのです。
私にとってもとても示唆に富んだ授業でした。
この授業で参考にしたのは、前回お伝えしたスリーエーネットワークさんの2009年の目録にあったコラム「『みんなの日本語Ⅰ』終了レベルでできる日本留学試験記述対策」(松浦)です。

ちなみに、「です・ます体」って大人の書く小論文としてどうなのかという問題もありますが、下手に「だ・である体」を教えて混在した文章を書くよりずっと低リスクです。
「です・ます体」だけで書いても採点でマイナスにはなりませんが、混在したら大きく減点ですからね。

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